「あの人はなぜ、思い描いたことを次々と実現できるんだろう」——そんな疑問を抱いたことはないでしょうか。
結論から言うと、成功する人としない人の差は、才能ではなく、叶えたい目標を「覚えているか、忘れるか」、突き詰めればそれだけの違いだと私は思っています。
身も蓋もない話に聞こえるかもしれないですが、これが意外と本質を突いています。
顕在意識と潜在意識
人間の意識には、「顕在意識」と「潜在意識」という2つの層があると言われています。
車の運転を思い出して下さい。
免許を取りたての頃は、ミラーの確認、ウインカー、ブレーキのタイミング——ひとつひとつを頭で考えながら操作していたはずです。
これは「顕在意識」、つまり意識して行っている状態です。
ところが運転に慣れてくると、そうした動作はいちいち考えなくても自然とできるようになります。
これが「潜在意識」の領域に入った状態なのです。
体が覚えていて、無意識のうちに動いてくれます。
目標や夢についても、まったく同じことが起きます。
たとえば、ずっと欲しかった車があるとします。
欲しいと思う前は、道を走っている車にいちいち注目することなんてなかったはずです。
でも一度「欲しい」と意識した瞬間から、不思議と街中でその車ばかり目につくようになります。
カタログを見れば自然と目を通し、関連する情報が勝手に飛び込んでくるようになります。
これは偶然でも超常現象でもありません。
「欲しい」という思いが潜在意識に刷り込まれ、脳が無意識のうちにその情報を拾い集めるようになっただけなのです。
心理学では、こうした「意識すると関連情報が目につきやすくなる」現象はカラーバス効果やカクテルパーティー効果に近い仕組みとして説明されることが多いです。
成功している人たちは、この仕組みを本能的に、あるいは意図的に使っています。
叶えたい目標を、意識しなくても体が動くレベルまで潜在意識に落とし込んでいるのです。
稲盛和夫が語った「心」の話
京セラを創業し、第二電電(現KDDI)を立ち上げ、晩年には経営破綻した日本航空(JAL)の再建を引き受けた稲盛和夫氏。
2010年、78歳のときに無報酬で会長に就任し、わずか数年で日本航空をV字回復させたことでも知られています。
「経営の神様」とまで呼ばれたこの人物が、著書の中で繰り返し語っていたのが「心」の話です。
稲盛氏は、自分の身に起こる出来事はすべて、自分自身の心が引き寄せたものだと説いています。
明るく前向きな思いを描けば明るい現実が、逆に不安や猜疑心を抱けばそれに見合った現実が引き寄せられる、という考え方です。
実際に稲盛氏は、若い頃に患った結核についてさえ、病気を避けようとする弱い心が、かえって災いを呼び込んでしまったのだと振り返っています。
これはオカルトの話ではない。
京セラという大企業を一代で築き、瀕死状態だったJALを再建した経営者が、自身の実体験をもとに語った哲学だという点に重みがあります。
計画を立てることは、頭に刻み込むこと
「計画を立てないことは、失敗する計画を立てているのと同じだ」——投資や起業の世界では、こうした格言がよく引用されます。
『金持ち父さん貧乏父さん』で知られる投資家ロバート・キヨサキも、著書や講演でこの考え方に触れています。
英語圏では古くから知られる格言で、出典をたどると自己啓発作家の説や、さらに古い時代の記録まで諸説あり、はっきりとした「最初の発言者」は特定できていません。
ベンジャミン・フランクリンの言葉だとする話もよく見かけるが、こちらも根拠がはっきりしないまま広まったもののようです。
それでも、この言葉が長年にわたって語り継がれてきた理由は分かる気がします。
計画を立てるという行為は、単に紙にスケジュールを書き出す作業ではなく、頭の中に、その計画の存在をあらかじめ意識づけておく作業そのものなのです。
計画を立てていない人は、目の前のことに流され、その場その場で判断するしかないですが、計画を立てた人は、無意識のうちにその計画を物差しにして、日々の選択を下すようになります。
これもまた、目標を顕在意識から潜在意識へと落とし込むための、具体的な手段のひとつだと言えるのです。
潜在意識に落とし込む、具体的な方法
では、どうすれば目標を忘れずに、潜在意識にまで落とし込めるのでしょうか。
稲盛氏自身が実践していたように、方法は意外とシンプルです。
叶えたい目標を、言葉にして紙に書き出す
それを、毎日必ず目にする場所に貼っておく
起業家であれば、事業計画として明文化し、経営判断を下すたびにそれを意識する
稲盛氏が創業した京セラには、「京セラフィロソフィ」と呼ばれる経営哲学がまとめられており、社員が日々それを読み返す文化があることでも知られています。
理念を言葉にして、繰り返し目に触れさせる。
これもまた、目標や価値観を組織の潜在意識にまで落とし込むための仕組みだと言えます。
「そんな単純なことで?」と思うかもしれません。
でも、この”単純なこと”を本当に継続できる人は、驚くほど少ないのです。
目標を紙に書いて満足し、貼ることすらしない人。
貼ったはいいが、数日で景色に溶け込んで見えなくなる人。
多くの人は、ここで止まってしまう。
成功しない人は、何が違うのか
逆に言えば、成功しない人の多くは、これらの行動を「やらない」人たちです。
夢や目標が見つかった瞬間は、誰だって胸が高鳴る。
「よし、やるぞ」という気持ちになる。
でも、それを紙に書いて貼るという、ほんの数分の手間を惜しんでしまう。結果として、せっかく見つけた目標は数日のうちに忘れ去られ、気づけばいつも通りの日常に戻ってしまっています。
これは意志が弱いという話ではなく、単に「忘れないための仕組み」を持っているかどうかの差だと思います。
人間の記憶は放っておけば薄れていくようにできています。
だからこそ、目に見える形で残し、強制的に思い出す環境を作った人だけが、目標を潜在意識まで運べるのです。
才能の差でも、運の差でもない。
この小さな仕組み化をやったかどうか、その差が積み重なって、数年後には大きな違いになっている——私はそう考えています。
もし今、叶えたい目標や夢があるなら、まずは紙に書き出してみて下さい。そして、それを毎日必ず目に入る場所に貼ってみて下さい。
たったそれだけのことだが、その小さな一歩こそが、目標を顕在意識から潜在意識へと落とし込む、最初のきっかけになります。
成功する人と成功しない人を分けているのは、特別な才能でも環境でもなく、こうした地味な習慣を続けられるかどうかなのかもしれません。



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